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  3. トラウマ、感情と関わる神経伝達物質3 ~精神状態のバランス・覚醒、うつ病に関わるセロトニン~

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セロトニンとは

セロトニン(別名 5-HT)は、うつ病の認知の広がりによって広く知られるようになった代表的な神経伝達物質の一つです。脳内では、ノルアドレナリンやドーパミンといった他の神経伝達物質の分泌量を調整し、精神の安定や感情のバランスを保つ重要な役割を担っています。

さらに、セロトニンは生活リズムにも深く関わっています。朝の起床時には覚醒作用をもたらし、活動を始めるためのエネルギーを支えます。そして夜になると、松果体においてメラトニンへと変換され、自然な眠気を誘発して睡眠を促します。このように、セロトニンは「心の安定」と「体のリズム」の両面に関与しているのです。

一方で、セロトニンが不足すると抑うつ症状や不安感が強まり、気分の落ち込みや意欲の低下につながることがあります。そのため、セロトニンを高める方法には注目が集まりやすく、抗うつ薬(SSRIなど)やハーブのセント・ジョーンズ・ワートが利用されることもあります。

セロトニンのもたらす効果

適度なセロトニン分泌量

・精神のバランスが保たれる。
・朝の目覚めがよくなる。
・青空をみたり運動した後はすっきり爽快な気分に。

不足したセロトニン分泌量

・無気力感、落ち込む
・慢性疲労、眠気
・鬱的症状

過剰なセロトニン分泌量

・セロトニン症候群的症状(交感神経高まった状態)
・イライラ感、興奮、不安が強くなる
・手が震える、発汗

セロトニンの出来方 ~トリプトファンからつくられる~


セロトニンは、必須アミノ酸であるトリプトファンから、5-HTP(5-ヒドロキシトリプトファン)を経て合成される神経伝達物質です。脳内では覚醒や体温調整、生体リズムの維持に深く関わり、心身の安定を支える重要な役割を果たしています。

L-トリプトファンは肉類・魚類・豆類などに豊富に含まれる必須アミノ酸であり、体内で合成することはできません。そのため、食事から摂取することが不可欠です。摂取されたトリプトファンは血液を介して脳に運ばれ、5-HTPを経てセロトニンへと変換されます。さらに夜間には松果体でメラトニンへと変化し、自然な眠気を誘発して睡眠を促します。

ただし、セロトニンを増やすことばかりに注目しすぎるのは危険です。L-トリプトファンや5-HTPを過剰に摂取すると、セロトニンが過剰に作用し「セロトニン症候群」と呼ばれる状態を引き起こす可能性があります。セロトニン症候群では、発汗・震え・動悸・不安・混乱などの症状が現れ、重度の場合は生命に関わることもあるため注意が必要です。

セロトニンの作られる場所 

体内のセロトニンの約90%は小腸などの消化管粘膜に存在し、脳内の中枢神経には約2%しか存在しません。一般的によく語られる「脳内で働くセロトニン(脳内セロトニン)」は、脳内に取り込まれたトリプトファンを原料として、脳幹にある縫線核(ほうせんかく)で合成されます。そこから大脳皮質、大脳辺縁系、視床下部、脳幹など広範な脳領域へ投射され、さまざまな作用をもたらします。
一方、腸内で生成されたセロトニンは血中を通っても血液脳関門を通過できないため、脳内の神経細胞に直接作用することはありません。

脳内のセロトニンは、大脳を覚醒させて集中力を高めたり、気分をすっきりさせるリラックス効果をもたらします。

夜になり光の量が減少すると、セロトニンは松果体メラトニンへと変換され、睡眠が促されます。

睡眠中はメラトニンが分泌されているためセロトニンは働きませんが、朝になり光を感知するとセロトニン神経が再び活動し、メラトニンがセロトニンへと変換されて覚醒作用として働きます。

セロトニンと精神障害の関係 ~定型うつ病(メランコリア)~

うつ病が「セロトニン低下によって起こる」とされるのは、1950〜60年代に提唱された「モノアミン仮説」に基づく考え方です。
これは脳内のモノアミン(セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなど)が不足すると、うつ病が発症するのではないかという推論で、これは実証された事実ではなく、抗うつ薬の作用から推論された仮説です。
実際に、脳内セロトニンやノルアドレナリンの低下がうつ病の原因であることを示す決定的なデータは存在しません。
従来型のうつ病(定型、メランコニー)に関しては抗うつ薬が効果の実感が得られやすく、新型うつに関しては効果が得られにくいと言われています。
現在、うつ病は単一の原因では説明できない多因子性疾患と考えられ、遺伝的要因、ストレス、ホルモンバランス、免疫・炎症反応、神経新生の低下などが複合的に関与する可能性が指摘されています。
今日では、うつ病は神経伝達物質の異常だけでなく、脳構造や免疫反応など多面的な要因が絡み合う複雑な病態と理解されています。

セロトニンを増やす方法

①トリプトファンで増やす

セロトニンは体内で直接合成されるわけではなく、必須アミノ酸であるトリプトファンを材料として生成されます。トリプトファンは肉類・魚類・豆類などのたんぱく性食品に多く含まれており、体内で合成できないため食事から摂取する必要があります。摂取されたトリプトファンは、まず5-HTP(5-ヒドロキシトリプトファン)へと変換され、その後セロトニンへと合成されます。

市販されている5-HTPサプリメントを利用する方法もありますが、これは血液脳関門を通過しやすいため、副作用を引き起こすリスクが指摘されています。具体的には、吐き気や胃腸障害、不安感、さらには過剰摂取によるセロトニン症候群の危険性もあるため、安易な使用は避けるべきです。したがって、自然な食品からトリプトファンを摂取する方が望ましいと考えられています。

さらに、トリプトファンからセロトニンが生成される過程では、葉酸・鉄分・ナイアシンといった補助因子が必要です。これらの栄養素が不足すると代謝が滞り、十分なセロトニンが合成されにくくなります。そのため、タンパク質だけに偏らず、野菜や果物、全粒穀物などを含むバランスの取れた食事を心がけることが大切です。

セロトニンに関わる食べ物

②日光浴

人間の脳は、網膜が強い光を感知するとセロトニン神経を活性化させます。特に太陽光は曇りの日でも室内照明よりはるかに強い光量を持ち、朝の光を浴びることで脳が覚醒し、セロトニンの分泌が高まります。こうして日中は気分が安定し、夜になると分泌されたセロトニンが松果体でメラトニンへと変換され、自然な眠気を誘発して睡眠の質を高めます。

効果的な日光浴のポイントは、起床後30分以内に15〜30分程度屋外で光を浴びることです。窓越しでは光量が減少するため、できるだけ直接光を浴びることが望ましいでしょう。季節によっては日照時間が短く、セロトニン不足が季節性うつ(SAD)の一因となるため、冬場は特に意識的に光を取り入れることが大切です。

また、日光浴は単独でも効果がありますが、ウォーキングやジョギングなどのリズム運動と組み合わせると、セロトニン活性がさらに高まります。

③呼吸法を利用する

脳内の酸素量が一時的に低下すると、縫線核と呼ばれる脳幹の領域からセロトニンの分泌が促されることが知られています。セロトニンは精神の安定や覚醒、体内リズムの調整に関わる重要な神経伝達物質であり、その分泌を自然に高める方法のひとつとして「呼吸法」が注目されています。

特に、吸うことよりも吐くことに主体を置いた呼吸は、副交感神経を優位にし、心身をリラックスさせながらセロトニン分泌を促す効果が期待できます。深く息を吸い、ゆっくりと長く吐き出すことで脳内の酸素濃度が変化し、縫線核が刺激されやすくなるためです。

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