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PTSDとは

PTSD

**PTSD(Post Traumatic Stress Disorder:心的外傷後ストレス障害)**とは、戦争、天災、事故、犯罪、虐待など生命が脅かされる体験や、パワハラなどによって尊厳を踏みにじられる強いショック体験が心に深い傷を残し、時間が経過してもなお恐怖や不安が続く状態を指します。

脳の扁桃体が過敏に反応し、交感神経が高まることで、恐怖・麻痺・回避・再体験・過覚醒・凍りつき・無力感などの症状が持続します。年月が経っても、当時の出来事を思い出させる光景や音、匂い、感情に触れると身体が過敏に反応し、恐怖に襲われたり、似た状況を極度に避けるようになります。これにより日常生活が困難になることもあります。

再体験症状(フラッシュバックや悪夢)は特に特徴的で、不眠や緊張、集中力低下、イライラなどを伴い、本人の生活の質を大きく損ないます。

PTSDによって生じる主な症状

PTSD

PTSDの症状は大きく4つに分類されます。

侵入症状(フラッシュバック)

トラウマとなった出来事の記憶が突然蘇り、悪夢として繰り返されることがあります。
動悸や発汗などの身体反応を伴い、本人は強い恐怖や動揺を感じます。

回避症状

出来事を思い出すことを避け、関連する人物・場所・状況を極力避けるようになります。
これにより社会生活や人間関係に支障が生じます。

認知と気分の陰性の変化

ネガティブな感情が強まり、ポジティブな感情を持てなくなります。
興味や関心を失い、孤立感や疎外感を感じるようになります。

覚醒度と反応性の著しい変化

常に神経が張り詰め、苛立ちや自己破壊的行動、過剰な警戒心が見られます。
些細な刺激に極端に驚く「驚愕反応」、集中困難、睡眠障害なども典型的です。

発症の背景

家庭環境

PTSDは災害、暴力、性被害、事故、戦闘、虐待、家庭内の激しい争いなどによって発症します。本人が直接体験するだけでなく、他人が巻き込まれるのを目撃したり、家族や親しい人が被害に遭ったことを知るだけでも発症することがあります。災害救援者や医療従事者なども二次的トラウマを受けることがあります。

PTSD後の人格形成への影響

PTSDの影響

発症初期には過剰警戒や怯えが強く見られますが、時間が経つと一見回復したように見える場合もあります。しかし、交感神経が高まり感覚が過敏になることで危険察知能力が過剰に働き、防衛反応として「解離」が進み、人付き合いを避けるようになることがあります。

その結果、HSP(Highly Sensitive Person)のように感受性が高く、一人でいることを好む特性が後天的に強まることもあります。これは必ずしも悪いことではなく、自己防衛の一形態として理解されるべきです。

PTSDのもたらす身体的障害

身体的障害

トラウマは「心の傷」と呼ばれますが、実際には脳と身体の神経系統に影響を与える外傷です。特に発達早期(母体内、出産、幼児期)は防衛システムが未成熟なため、トラウマの影響を受けやすく、その後の人生に長期的な影響を及ぼします。

幼少期には癇癪、おねしょ、爪噛み、チックなどが見られ、青年期には自律神経失調症、虚弱体質、抜毛症、解離性障害、睡眠障害などが現れます。成人期にはアルコール依存、薬物依存、うつ病、パニック障害、摂食障害、強迫性障害、自傷行為などのリスクが高まります。

さらに、慢性疲労症候群、線維筋痛症、過敏性腸症候群、自己免疫疾患、がんなど、身体的な慢性病にもかかりやすいとされています。

PTSDとトラウマ治療

克服

トラウマを抱えると、人間関係が続かない、引きこもりやすい、恋愛や子育てに自信が持てないなど、生きづらさにつながります。しかし、安心できる人間関係や支援環境があると自然に回復していくこともあります。

また、苦痛を力に変え、学術・芸術・仕事・子育て・スポーツなどに励むことで人生を好転させる人もいます。

ただし、PTSDに伴う精神疾患(うつ病、パニック障害、解離性障害など)に対しては、カウンセリングや精神論だけでは不十分です。脳科学的・身体的アプローチが有効であり、自律神経システム(脳幹)、情動・運動・本能システム(大脳辺縁系)の働きを整えることが改善につながります。これにより意識が実感できるようになり、生きがいやモチベーションを高めることが可能になります。

まとめ

PTSDは単なる「心の問題」ではなく、脳と身体の神経系に深く関わる障害です。症状は精神的・身体的に広範囲に及び、人格形成や社会生活にも影響を与えます。しかし、適切な理解と支援、科学的アプローチによって回復は可能です。

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