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パニック障害 ― 不安神経症から独立した診断へ

かつてパニック障害は「不安神経症」の一部として扱われ、全般性不安障害と並列的に考えられていました。
しかし1980年、DSM-III(精神疾患の診断・統計マニュアル第3版)の登場により、パニック障害は独立した診断カテゴリーとして位置づけられるようになりました。
これにより、従来「漠然とした不安」としてまとめられていた症状群が、より具体的に「突発的な強烈な恐怖発作」として理解されるようになったのです。
パニック障害の特徴的症状

パニック障害の中心は「パニック発作」と呼ばれる突発的な自律神経症状です。
身体に器質的な病気がないにもかかわらず、突然以下のような症状が現れます。
・強烈な動悸:「心臓が破裂するのではないか」「窒息死するのではないか」という恐怖を伴う
・呼吸困難・過呼吸:息が吸えない、胸が締め付けられる感覚
・めまい・ふらつき:立っていられない、意識が遠のくような感覚
・発汗・震え・しびれ:手足の末端が冷えたり震えたりする
・強い焦燥感と罪悪感:発作時に周囲を巻き込み「迷惑をかけてしまう」と感じる
これらは一度経験すると「また起こるのではないか」という予期不安を生み、日常生活に大きな制限をもたらします。
予期不安と悪循環

パニック障害の苦しさは、発作そのものだけでなく「次の発作への恐怖」によって増幅されます。
・「もし電車に乗ったら」
・「もし人混みに入ったら」
・「もし閉じ込められたら」
こうした想像が常に頭を支配し、交感神経が高まり続けることで、発作が起こりやすくなるという悪循環に陥ります。これが予期不安の本質です。
発作が起こりやすい状況

・乗り物恐怖:電車、バス、飛行機など逃げ場のない環境
・広場恐怖症:人混みや狭い場所での強烈な不安
・留守番恐怖:家の中で一人きりのときに襲う異様な恐怖
これらは「逃げられない」「助けを求められない」という状況に共通しており、パニック障害の根底にある「制御不能感」を象徴しています。
自律神経との関係
パニック障害の人は、発作時だけでなく普段から交感神経が高まりやすい傾向があります。
・緊張が強く疲れやすい
・肩こり、腰痛、頭痛が慢性的に続く
・呼吸が浅く、肩甲骨周辺が硬直
・姿勢が猫背気味になる
・併発症状
過呼吸症候群
自律神経失調症
発作は「死ぬものではない」と医学的には説明されますが、本人にとっては「死の恐怖」に直結する体験であり、その恐怖がさらに不安ループを強化してしまいます。
発症要因
パニック障害の発症には、トラウマ体験が関与する場合もありますが、近年は生活習慣や環境要因も大きく影響しています。
・夜型生活:睡眠リズムの乱れが交感神経を高める。
・ブルーライト:スマートフォンやPCからの光刺激が脳を覚醒させる。
・電磁波環境:交感神経を刺激しやすい要因とされる。
さらに、精神科で処方される抗不安薬や睡眠薬(ベンゾジアゼピン系)の長期服用は、交感神経を潜在的に高める状態を作り出します。
そのため薬の効果が切れたり、急な断薬をきっかけにパニック発作が誘発されることも少なくありません。
心理的背景と社会的影響
パニック障害は単なる身体症状ではなく、心理的・社会的な影響も大きいです。
・常に「次の発作」を恐れる生活
・自己否定感や罪悪感の増大
・不安障害やうつ病の併発
・外出制限による社会生活の縮小
・仕事や学業への支障
・家族や周囲への依存度の増加
まとめ
・パニック障害は1980年以降、DSMで独立した診断カテゴリーとなった
・突発的な自律神経症状(動悸、呼吸困難、めまいなど)が中心
・予期不安」による悪循環が生活を大きく制限する
・身体的緊張、姿勢の変化、過呼吸、自律神経失調症を伴いやすい
・心理的・社会的影響が大きく、生活の質を著しく低下させる