はじめに

脂質には飽和脂肪酸・不飽和脂肪酸といった大きな分類がありますが、実際にはその中にさらに多くの種類が存在し、それぞれが異なる性質や働きを持っています。
同じ「脂質」という言葉でまとめられていても、体内での役割や健康への影響は大きく異なるため、種類ごとの特徴を理解することがとても重要です。
従来は「脂質=太る」「脂質=健康に悪い」というイメージが強く、ダイエットや健康管理では“できるだけ脂質を減らす”という考え方が一般的でした。
しかし近年の研究では、脂質の中には体に良い影響を与えるものも多く、むしろ適切に摂ることで代謝が整い、肥満や生活習慣病の予防につながることが明らかになってきています。
脂肪酸の特徴を知っておくと、
・どの脂質を意識して摂るべきか
・どの脂質を控えめにすべきか
・食事のバランスをどう整えると健康に近づくか
といった判断がしやすくなり、日々の食生活にすぐ活かすことができます。
また、脂質は単にエネルギー源としてだけでなく、ホルモンの材料になったり、細胞膜を作ったり、脳の働きを支えたりと、生命活動に欠かせない役割を担っています。
そのため、脂質を極端に避けるのではなく、“質の良い脂質を、適切なバランスで摂る”ことが、健康づくりやダイエットの成功にとって非常に大切です。
脂質の割合の見方 ~脂質が高いだけで太るわけではない~

食物の成分割合をみてみると、
のように書かれています。
体重を気にする場合、脂質の部分をつい気にしてしまいがちです。
実際に脂質を細かくみていくと
といった構成となっています。
脂質の中でも体脂肪として蓄積されやすい要因になるのは、主に「長鎖脂肪酸」の量です。
これまでは脂質を大きく“飽和脂肪酸”としてひとまとめに語られることが多かったのですが、実際にはその中に、ダイエット効果が期待される「中鎖脂肪酸」も含まれていました。
飽和脂肪酸=太りやすい脂質というイメージが強かったものの、すべてが同じ働きをするわけではありません。
とはいえ、飽和脂肪酸の大部分は長鎖脂肪酸で構成されているため、「飽和脂肪酸は太りやすい」という従来の説明が完全に誤りというわけでもありません。
ただし、脂質の世界は本来もっと多様で、種類によって体への影響が大きく異なるという点が重要です。
さらに、脂質の中には人体で合成できない「必須脂肪酸(ω-6系・ω-3系)」も含まれています。
これらは細胞膜の材料になったり、ホルモン様物質の生成に関わったりと、健康維持に欠かせない働きを持っています。
つまり、脂質=悪という単純な図式ではなく、“どの脂質をどのように摂るか”が健康や体重管理に大きく影響するのです。
下記の図は、脂質を構成する成分の割合をパーセンテージで示したものです。
食品中の脂質は、炭素・水素・酸素が鎖状につながった「脂肪酸」が3本、グリセロールという骨格に束ねられた形で存在しています。
いわば、3本の紐が1つの芯に結びついたイメージです。
この脂肪酸の種類や長さの違いが、体内での代謝スピードやエネルギーとしての使われ方を大きく左右します。

脂肪酸の配合比

例えば、オリーブオイルとベニバナオイルの成分表を比べてみましょう。
オリーブオイルは、ω-9系のオレイン酸が豊富に含まれている代表的な油です。
そのほかにも、リノール酸(ω-6系)や飽和脂肪酸などがバランスよく含まれています。
一方、食用油としてよく利用されるベニバナオイルは、ω-6系のリノール酸が非常に多いことが特徴で、オレイン酸は比較的少なめです。
どちらも植物油で見た目は似ていますが、脂肪酸の構成が大きく異なるため、体への働きも変わってきます。
ここで押さえておきたいのは、
・オレイン酸(ω-9系)…非必須脂肪酸(体内で合成できる)
・リノール酸(ω-6系)…必須脂肪酸(体内で合成できない)
という違いです。
「必須」と聞くと“たくさん摂らなければ”と思いがちですが、現代の日本人はむしろω-6系脂肪酸を過剰に摂取している傾向があります。
ω-6系を摂りすぎると、免疫細胞の働きが乱れやすくなり、その結果として
・花粉症などのアレルギー性炎症
・動脈硬化
・心臓疾患
などのリスクが高まる可能性が指摘されています。
市販の「植物油」と表示されているものの多くは、リノール酸を多く含む油が使われていることが多いため、日常的に使う油はオリーブオイルなどオレイン酸主体のものを選ぶ方が望ましいとされています。
飽和脂肪酸を多く含むオイル

一方、パーム油とココナッツオイルは飽和脂肪酸がいっぱい含まれています。
両者を比較すると、飽和脂肪酸の多いココナッツオイルのほうが「太る」と捉えがちです。
しかし、実際、その内訳をみてみるとガラッと変わってきます。
パーム油は、短、中鎖脂肪酸がほとんど含まれておらずほとんどが長鎖脂肪酸(パルミチン酸、ステアリン酸)です。
ココナッツオイルは8割が飽和脂肪酸ですが、その半分は短、中鎖脂肪酸になっています。
そのため、「太りやすい」のはパーム油のほうになります。
MCLオイルはこの中から、カプリル酸とカプリン酸のみを取り出したオイルなので、ココナッツオイルは希少な成分といえるでしょう。
以上、脂質をみるときはなるべくどのような成分の脂肪が含まれているのかチェックしておくと、肥満や生活習慣病予防にも繋がっていけるかと思います。