はじめに
食品に含まれる動物性由来の飽和脂肪酸の多くは長鎖脂肪酸で構成されており、これらが体内に蓄積されやすいことから、肥満の原因につながる可能性が指摘されてきました。
長鎖脂肪酸はエネルギーとして利用されるまでに時間がかかり、余剰分が中性脂肪として蓄積されやすいという特徴があります。
一方で近年、太りにくい脂肪として注目されているのが、短鎖脂肪酸や中鎖脂肪酸です。
これらは吸収・代謝のスピードが速く、体脂肪として蓄積されにくい性質を持つことから、健康食品やダイエット分野で利用が広がっています。
今回は、この短鎖脂肪酸・中鎖脂肪酸の特徴や働きについて、詳しく見ていきます。
短鎖、中鎖脂肪酸とは
短鎖脂肪酸は、飽和脂肪酸のうち炭素数が7個以下のものを指し、中鎖脂肪酸は炭素数8〜12個の比較的小さな脂肪酸です。
分子が小さい分、水溶性が高く、体内での吸収が速いという特徴があります。吸収後は門脈を通って直接肝臓に運ばれ、すぐにエネルギーとして利用されやすいため、体脂肪として蓄積されにくいとされています。
一方、食品中に含まれる脂肪酸の大半は、パルミチン酸(炭素数16)やステアリン酸(炭素数18)といった長鎖脂肪酸です。
そのため、短鎖脂肪酸や中鎖脂肪酸は一般的な食事からは比較的摂取しにくい脂肪酸であり、意識的に取り入れる必要があります。

短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸の特徴
長鎖脂肪酸は、炭素数が多く分子が大きい分、エネルギー量が大きいという特徴があります。
しかし、そのエネルギーが体内で完全に使い切られにくく、余剰分が残りやすいという性質も持っています。使われずに残った長鎖脂肪酸は中性脂肪として体内に蓄積され、これが続くと肥満や生活習慣病のリスクが高まるとされています。
一方、短鎖脂肪酸や中鎖脂肪酸は、分子が小さいため吸収が速く、エネルギーとしてすぐに利用されやすい脂肪酸です。
そのほとんどが速やかに消費されるため、体脂肪として蓄積されにくいという特徴があります。
この性質から、短鎖脂肪酸・中鎖脂肪酸は肥満防止やダイエットに適した脂肪酸として注目されています。

脂肪酸の長さは、体内での吸収効率や代謝スピードに大きく影響します。
長鎖脂肪酸は、腸内で胆汁と混ざってミセルを形成した後、リンパ管に取り込まれ、血液循環を通って全身へ運ばれます。
脂肪酸がエネルギーとして利用される場所は、細胞内のミトコンドリアです。
ここで脂肪酸は酸素と反応し、二酸化炭素と水に分解される過程でエネルギーを放出します。
しかし、長鎖脂肪酸がミトコンドリアに入るためには、カルニチンと結合する必要があるため、代謝までにいくつものステップを踏むことになります。
このように、長鎖脂肪酸は吸収から代謝までのプロセスが複雑で、消化・利用されるまでに時間がかかるのです。
一方、短鎖脂肪酸や中鎖脂肪酸は、腸から門脈を通って直接血管へ移動し、そのまま肝臓に運ばれます。ミトコンドリアに入る際にもカルニチンを必要としないため、非常にスムーズに代謝されるという特徴があります。
長鎖脂肪酸は体内で“滞留”しやすいのに対し、中鎖脂肪酸は速やかに肝臓で分解され、約10時間で体内からほとんど消失します。
この代謝の速さこそが、短鎖脂肪酸・中鎖脂肪酸が体脂肪として蓄積されにくい理由です。

短鎖脂肪酸・中鎖脂肪酸の特徴
・体内で吸収されやすい
・分解速度がはやく脂肪として体内に残らない。
そのため太りにくく、生活習慣病予防となり、ダイエットにも適した脂肪酸といえます。
短鎖脂肪酸の働き
短鎖脂肪酸と大腸との関わり
消化器官の腸は小腸と大腸に分けられます。
どちらの腸の細胞も、人間と同じようにエネルギー源となる栄養素が供給されなければ生きていけませんが、その供給方法は大きく異なります。小腸の細胞は、血液を通してブドウ糖やアミノ酸などのエネルギー源が直接届けられる仕組みになっています。
一方、大腸の細胞が利用するエネルギー源の約70%は短鎖脂肪酸です。
食べたものの一部が大腸で腸内細菌によって分解され、その過程で生成された短鎖脂肪酸が、そのまま大腸細胞の栄養源として使われているのです。
余った短鎖脂肪酸は血液中に吸収され、全身のエネルギー源としても利用されます。
また、酢酸・プロピオン酸・酪酸などの炭素数が少ない短鎖脂肪酸は酸性の性質が強いため、腸内のpHを下げ、腐敗を防ぎ、悪玉菌の増殖を抑える働きがあります。
この作用により、腸内環境が整い、腸のバリア機能や免疫にも良い影響を与えます。
短鎖脂肪酸はまさに**大腸の“餌”**ともいえる存在で、大腸の健康を維持するために欠かせない物質なのです。

腸内で短鎖脂肪酸を増やすには
「短鎖脂肪酸は体に良いなら、食品から直接摂ればいいのでは」と考えがちですが、実はそう単純ではありません。
たとえば、お酢(酢酸)は短鎖脂肪酸の一種ですが、ほとんどが小腸で吸収されてしまうため、大腸まで届かず、腸内環境を整える効果は限定的です。
また、短鎖脂肪酸そのものを多く含む食品は非常に少なく、代表的なものは牛乳や乳製品ですが、それでも含有量は数パーセント程度にとどまります。
そのため、食品から短鎖脂肪酸を“直接”十分に摂取するのは現実的ではありません。
一方、ビフィズス菌などの有益な腸内細菌は、オリゴ糖や食物繊維を発酵させることで短鎖脂肪酸を生成します。つまり、腸内に善玉菌が多いほど短鎖脂肪酸が増え、大腸の健康が保たれ、全身の調子も整いやすくなるのです。
さらに、腸と脳は「腸脳相関」と呼ばれる密接な関係があり、腸内環境が整うことで脳の働きが活性化されることも知られています。
腸内で短鎖脂肪酸を増やすための有効な方法として注目されているのが、シンバイオティクスです。
これは、善玉菌そのもの(プロバイオティクス)と、そのエサとなるオリゴ糖や食物繊維(プレバイオティクス)を組み合わせて摂る方法で、腸内で効率よく短鎖脂肪酸を増やすことができます。
水溶性食物繊維は消化酵素では分解されず、そのまま大腸まで到達します。
大腸に届いた水溶性食物繊維は、腸内細菌によって分解・発酵され、短鎖脂肪酸をつくる材料になります。
この短鎖脂肪酸こそが、大腸のエネルギー源となり、腸内環境を整えるうえで非常に重要な役割を果たします。
発酵力のあるビフィズス菌などの善玉菌を積極的に摂ることも有効ですが、ビフィズス菌には多くの種類があり、
中には胃酸や胆汁酸に弱く、大腸まで届く前に死滅してしまう菌株もあります。
そのため、腸までしっかり届き、増殖できる菌株を選ぶことが大切です。
グリコが開発した**「ビフィズス菌 BifiX」**は、大腸でよく増えることが確認されており、
短鎖脂肪酸を増やす力も高いことがわかっています。
腸内で効率よく短鎖脂肪酸を増やすためには、こうした“生きて届く”菌株を選ぶことがポイントになります。