はじめに

精神的な不調には、自律神経の働きが深く関わっています。
うつ病やパニック症状などは症状こそ異なりますが、いずれもストレスによって自律神経やホルモンのバランスが乱れ、心身の調整がうまくいかなくなることが背景にあります。
慢性的なストレスが続くと、自律神経の働きが弱まり、脳内の神経伝達物質の働きが低下しやすくなります。その結果、気分の落ち込みや不安、意欲の低下といった精神的な不調が生じることがあります。また、ストレスホルモンの影響で神経細胞の働きが弱まり、記憶力や集中力が低下することもありますが、これらは多くの場合、適切なケアによって回復が期待できる可逆的な変化です。
神経細胞の健康を支える要素として、BDNF(脳由来神経栄養因子)がよく知られています。BDNFは有酸素運動などで増え、神経の修復や可塑性を高める働きがあります。さらに近年では、HSP(ヒートショックプロテイン)という細胞保護タンパク質もBDNFの働きを支え、神経細胞の回復に役立つ可能性が示されています。
こうした神経環境が整っていくことで、神経伝達物質の働きも改善し、精神面の回復にもつながっていきます。
HSP(ヒートショックプロテイン)とは

ヒートショックプロテイン(HSP)は、細胞が熱などのストレスにさらされたときに増える、細胞を守るためのタンパク質です。傷んだ細胞の修復を助けるほか、免疫細胞の働きを支えたり、乳酸の蓄積を遅らせて疲労を軽減したり、肌の状態を整えるなど、さまざまな健康効果が報告されています。
HSPには分子量の違いによって、HSP40、HSP60、HSP70、HSP90、HSP105といった複数のファミリーがあり、それぞれが細胞の保護や修復に異なる役割を担っています。
HSPが増えると、細胞の自己回復力が高まり、心身の健康維持にも役立つと考えられています。日常生活の中で適度な温熱刺激や運動を取り入れることで、HSPを効率よく増やすことができます。
HSPの効果
・日常生活での疲れを軽減
・病気の予防
・ストレスによる細胞の損傷を防ぐ
・炎症を防ぐ
・鬱の治療と予防
・がん治療、がん予防
・寿命を延長
HSPとうつ病との関係

うつ病の方では、BDNF(脳由来神経栄養因子)の低下や神経細胞の働きの弱まりがみられることが知られています。同様に、うつ病や感情障害の方では、細胞を保護するヒートショックプロテイン(HSP)も減少しやすいことが報告されています。特に、HSP70やHSP105といったタイプが関与すると考えられています。
HSPが少なくなると、細胞の修復力やストレスへの耐性が低下し、健康な人に比べてストレスの影響を受けやすくなることがあります。逆に、HSPを増やすことで細胞の回復を助け、ストレスに強い身体づくりをサポートできる可能性があります。
HSPを増やすには

細胞を修復してくれる頼もしい働きをもつヒートショックプロテイン(HSP)。
一見すると増やすのが難しそうに思えますが、実は家庭でも手軽に取り入れられる方法があります。
身体を温める(HSP入浴法)

ヒートショックプロテイン(HSP)は、身体に熱が加わることで増えるため、入浴などで体を温めることによって効率よく生成されます。HSPは体温が約38度前後になると活性化しやすいため、入浴時には「少し熱い」と感じる程度の温度が目安になります。
ただし、平熱には個人差があるため、一律に38度を目指す必要はありません。自分の平熱を基準にして「平熱+1.5度」ほど体温が上がる状態を目安にすると、無理なくHSPを増やすことができます。
手順
1.入浴前に水分を補給し脱水症状を防ぎます。
入浴前に500mlの水分補給が理想です。HSP入浴法だと700ml~1リットルの水分が汗で失われることになるので、ヒートショックプロテイン入浴法の前には必ず水分補給を行いましょう。
2.40~42度で20分入浴(温度をあげすぎると効果がなくなるのであげすぎないように)
ちょっと熱いので入浴中は湯船からでて休んでもOK.
10分入浴⇒5分休憩⇒10分入浴など
マッサージ、肩もみなどすると時間を有効に使えます。
3.20分入浴したら、舌の下に体温計を入れ舌下温を測定し、体温が1.5度上昇していることを確認
4.入浴後は、部屋を適温にして身体を冷やさず、温めすぎないようにします。
また、2回目の水分補給も忘れずに。この時も500mlを目安に必ず水分補給を行います。
夏
入浴後、体を拭いて、バスタオルをかけて10~15分間休息します。(Tシャツ、パンツでよい)室温が30℃以上であれば、軽くクーラーをつけ(約28℃設定)にしてもかまいません。
冬
水をしっかり拭いて出ます。衣服(トレーナーやジャケットなど)を着て、靴下をはいて身体が冷えないように保温します。室温は20℃程度に設定したり、ストーブをつけたりして温かくします。身体が冷えるようであれば、温かいショウガ紅茶などで水分補給して体温を維持します

その他
・増加したHSPは入浴した2日後をピークに1週間ほど体内に残り力を発揮します。
そのため、ストレスのかかる日が分かっている日の2日前に入浴すると効果的で、週2回程度の頻度で行うと
いいでしょう。
・入浴剤を利用すると効果的です。
・ヒートショックプロテイン入力は、普段の入浴より身体に負担をかける入力法です。
そのため、体調の悪い日は避けるなど無理をしないようにしましょう。
また、42度は最も事故が起こりやすい温度です。
特に冬場は、お風呂から出たときの温度変動で事故が起こりやすいので、浴室もお湯で温めるなど注意しましょう。
有酸素運動

ヒートショックプロテイン(HSP)は、身体を温めるだけでなく、運動によっても増やすことができます。特に効果的なのは有酸素運動で、軽く息が弾む程度の強度が目安になります。
HSPが増えやすいのは、ハァハァと呼吸が速くなるくらいの運動を30分以上続け、それを2週間ほど継続した場合だといわれています。無理のない範囲で続けることで、細胞の回復力やストレスへの強さを高めるサポートになります。
ただし、運動をやりすぎると、かえってHSPが減少してしまうことがあります。過度な負荷を避け、自分にとって心地よいペースで続けることが大切です。
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