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- トラウマ症状
解離とは何か

解離とは、無意識に起こる心の防衛システムの一つであり、意識や記憶、感情、自己感覚が一時的に分離してしまう現象を指します。正常な範囲での解離は誰にでも起こり得るもので、例えば電車に乗っている間の記憶が曖昧になることや、強い眠気でぼんやりする状態などがその例です。これらは脳が休息を取るための自然な働きであり、ストレスや疲労を軽減する役割を果たしています。
一方で、強いストレスやトラウマ体験によって生じる病的な解離は、生活に支障をきたすことがあります。記憶の空白や現実感の喪失、自分が自分でないように感じる感覚などが代表的な症状です。
脳科学的背景

解離は脳の「島皮質」や「帯状回」「脳梁」といった領域の働きが弱まることで生じると考えられています。自律神経系のバランスが崩れ、交感神経と副交感神経の背側迷走神経が過剰に働くことで低覚醒状態となり、意識が遠のき、身体が硬直し、現実感が薄れるのです。
これはまるで冬眠状態に入ったかのような反応であり、生命を守るための防衛反応でもあります。
正常な解離の例
正常な解離は、軽い休息やリラックスをもたらす働きを持っています。
これらは軽度の解離であり、脳が疲労を回避するための自然な機能です。
病的な解離の症状

病的な解離では以下のような症状が現れることがあります。
これらは生活に深刻な影響を与え、統合失調症と誤診されることも少なくありません。
正しい診断と理解が必要です。
幼少期の影響

解離性障害は幼少期の環境と深く関わっています。
支配的な親、DV、ネグレクト、虐待、夫婦喧嘩の絶えない家庭環境などが要因となりやすいです。
また、病弱で繊細な体質や、感受性の高いHSP(Highly Sensitive Person)の傾向を持つ人にも多く見られます。幼少期に安心できる環境が欠けると、心は防衛のために解離を強め、空想やイマジナリーフレンドを生み出すことがあります。
解離性障害の種類(DSM分類)
解離性障害は3つにカテゴリー分けされます。
この中で最も多いのが離人症で、解離性障害の8割は離人症に該当します。
解離性同一障害はかなり稀な症状です。
1.離人症性障害
世界が夢のように見え、頭に膜がかかったような感覚や感情の喪失が起こります。
2.解離性健忘/遁走
苦痛から逃避するために自伝的記憶が失われ、場合によっては失踪して別人として生活することもあります。
3.解離性同一性障害(DID)
複数の人格が交代で現れる最も重度の解離性障害です。
HSPとの関係

HSPの人は人口の約20%を占めるといわれています。
離人症は人口の約2%ですが、HSPの中でも特に感受性の強い人に多く見られます。
哲学者や芸術家に離人症的傾向があるとされることもあり、深い思索や洞察力の代償として現れるものと考えられています。
防衛反応としての解離

防衛反応には「闘争・逃走」と「凍りつき・麻痺」があります。解離は後者に属し、生命を守るために意識を切り離す反応です。苦痛を回避する役割を持ちますが、長期化すると障害へと進展します。
解離の影響と二次障害

解離が強まると以下のような影響が生じます。
・うつ病、境界性パーソナリティー、依存症(アルコール、薬物、買い物など)
・学習困難(集中できない)
・発達障害的な症状(注意散漫、物を落とす)
・対人恐怖や依存性パーソナリティー
まとめ
解離は心の防衛反応であり、正常な範囲では休息やストレス緩和の役割を果たします。
しかし、強いストレスやトラウマによって病的な解離へと進むと、生活に深刻な影響を与えます。
・正常な解離 → 休息・リラックス
・病的な解離 → 解離性障害(離人症、健忘、DID)
・幼少期の環境やHSPとの関係が深い
・脳科学的には「意識の統合機能の停止」