はじめに
本記事では、炭水化物の糖類についてと、体内でのエネルギーになるまでの流れについてまとめています。
糖の分子状態
炭水化物の単糖類には、ぶどう糖(グルコース)、果糖(フルクトース)、ガラクトースなどがあります。
果糖はフルーツ類に多く含まれ、ガラクトースは乳製品に多く含まれます。
二糖類以上の炭水化物は、これらの単糖類が組み合わさって構成されています。
例えば、麦芽糖(マルトース)はグルコースが2つ結合したもの、ショ糖(スクロース)はグルコースとフルクトースが結合したもの、乳糖(ラクトース)はグルコースとガラクトースが結合したものです。
多糖類であるでんぷんは、すべてグルコースが多数つながってできています。

1.単糖類
炭素原子は連鎖状に配列し、最も外側の一つがアルデヒド基となった構造をした、甘味をもつ無色結晶です。
日常的に最も身近な単糖がぶどう糖(D-グルコース C6H12O6)です。

ぶどう糖(D-グルコース)
ぶどう糖は、穀物や果物に多く含まれる代表的な糖です。血液中には約0.1%の濃度で存在し、体がエネルギーを産生する際の主要な材料として働きます。重要な役割を担う一方で、過剰に摂取すると脂肪肝や糖尿病、肥満の原因になることがあります。
米、パン、麺類、ぶどう、バナナ、ごぼう、いも
果糖(フルクトース)
果物やはちみつに多く含まれ、単糖の中でも特に小さな分子であるため、吸収が早く、すばやくエネルギーになります。そのため、激しいスポーツ時に摂取すると疲労回復を助けてくれます。血糖値を直接上げることはありませんが、小腸で吸収された後は肝臓で分解されてエネルギーとなり、一部は中性脂肪に変わるため、過剰に摂ると肥満につながりやすい糖でもあります。
ぶどう、バナナ、さくらんぼ、なし、りんご、すいか 他
ガラクトース
単独では存在せず、二糖類や多糖類の構成成分として含まれています。体内では肝臓でぶどう糖に変換され、エネルギーとして利用されます。また、乳汁に含まれる成分でもあり、乳児の成長を促す働きを持っています。
乳製品や甜菜、ガム、および粘液
2.少糖類(二糖類、オリゴ糖)
単糖の分子が2~10個結びついたものです。
2つ結びついたものを二糖類、3(あるいは2)~10個のものをオリゴ糖といいます。

麦芽糖(マルトース)
大麦を発芽させ、湯を加えてデンプンを糖化したものに多く含まれることから、麦芽糖と呼ばれています。ぶどう糖が二つ結合した糖で、甘味は砂糖より弱いものの、旨みが強いのが特徴です。消化されるとぶどう糖に分解され、血糖値を上げてエネルギーとして利用されます。ビールづくりには欠かせない糖でもあります。
麦芽、さつまいも、水飴
ショ糖(スクロース)
砂糖の主成分であり、サトウキビやテンサイなどから得られる、ぶどう糖と果糖が結合した化合物です。白砂糖は精製された分蜜糖で、黒砂糖などは糖蜜を含むため「含蜜糖」と呼ばれ、色が濃く、甘みも強いのが特徴です。エネルギー以外の栄養素はほとんど含まれておらず、脂肪に変わりやすいとされるため、摂りすぎには注意が必要です。
テンサイ、さとうきび、砂糖
乳糖(ラクトース)
ぶどう糖とガラクトースが結合した糖で、乳児にとって不可欠な栄養成分です。小腸では、ラクターゼという消化酵素によって単糖に分解されてから吸収されます。ラクターゼの活性は成長とともに低下することがあり、牛乳を飲むとお腹がゴロゴロしやすい人はこのタイプで、乳糖不耐症と呼ばれます。
牛乳、ヨーグルト、チーズ、母乳
3.多糖類
単糖が多数結合したもので、オリゴ糖より大きな構造を持つ糖質です。代表的なものに、でんぷん、グリコーゲン、デキストリンがあり、植物や動物がエネルギーを貯蔵する際には、この多糖類の形で存在します。

でんぷん
デンプン(スターチ)は、多数のぶどう糖が結合してできた植物性の多糖類です。デンプンには、直鎖状のアミロースと、枝分かれ構造をもつアミロペクチンが存在します。アミロペクチンは、水を加えて加熱すると粘り気を生じる性質があります。体内では分解され、最終的にぶどう糖として利用されます。
穀類、いも、豆類
グリコーゲン
多数のぶどう糖が結合してできた、動物性のデンプン様多糖類です。体内では肝臓と筋肉で合成され、エネルギー源として貯蔵されます。ただし、脂肪ほど長期的なエネルギー貯蔵には向かず、一時的に血糖が過剰になった際の調整役として働きます。
貝類、エビ、レバー
デキストリン
コーンスターチや馬鈴薯でんぷんを原料とし、でんぷんを化学的または酵素的な方法で低分子化したものです。
合成甘味料、糖アルコール
糖質には、キシリトール、マルチトール、エリスリトールといった「糖アルコール」や、アセスルファムK(カリウム)、スクラロースなどの「合成甘味料」も含まれます。「糖類ゼロ」や「ノンシュガー」と表示されているダイエット食品は、単糖類と二糖類が基準値以下(食品100g/飲料100mlあたり0.5g未満)であることを示しており、糖類が全く含まれていないという意味ではありません。甘味を感じる食品には、糖類以外の糖質(糖アルコールや合成甘味料)が含まれている可能性が高く、かえって肥りやすくなる危険性があるとも言われています。
糖類の状態変化(単糖⇔多糖類)
食物に多く含まれるでんぷんは、ぶどう糖が多数つながった鎖状の多糖類です。体内では分子が大きすぎてそのままでは消化できないため、唾液や膵液の酵素によって結合が一つずつ切り離され、二糖類の麦芽糖(マルトース)を経て、最終的に単糖のぶどう糖になります。
ぶどう糖は血液中に入ることで血糖値を上昇させ、細胞内に取り込まれた後はミトコンドリアでATP(アデノシン三リン酸)を産生します。このATPが体内のエネルギー源として利用されます。(ぶどう糖1分子からは約38分子のATPが生成されます。)
また、植物では光合成によって作られたぶどう糖が結合し、植物性多糖類であるデンプンとして貯蔵されます。一方、人間や動物では、使われなかったぶどう糖はインスリンなどの働きによって動物性多糖類のグリコーゲンとして肝臓や筋肉に貯蔵されます。

糖質がエネルギーになるまでの体内メカニズム

糖質は血糖値を上げる唯一の栄養素であり、最も即効性の高いエネルギー源です。1グラムあたり約4キロカロリーのエネルギーに相当します。私たちが日常的に食べるご飯やパン、小麦製品(うどん、パスタなど)はデンプンが主成分で、体内で分解されるとぶどう糖(D-グルコース)になります。
このぶどう糖は代謝の中心的な存在で、多くの生命体が生命活動のエネルギー源として利用しています。ここでは、食品に含まれるデンプンが体内でどのようにしてぶどう糖へと分解され、エネルギーとして使われていくのかを見ていきます。
デンプンからぶどう糖(グルコース)に分解
ご飯に含まれる多糖類のデンプンは、口に入ると唾液中のアミラーゼという酵素によって二糖類の麦芽糖へと分解され始めます。さらに、膵液にもアミラーゼが含まれており、ここで麦芽糖まで分解されていなかったデンプンも麦芽糖へと分解されます。
麦芽糖が小腸に到達すると、小腸の表面から分泌される消化酵素マルターゼによってぶどう糖(グルコース)に分解されます。分解されたぶどう糖は毛細血管から吸収されて肝臓へ送られ、その後、血液に乗って全身の細胞へ運ばれます。

ぶどう糖(グルコース)のエネルギー変換
ぶどう糖は細胞質に入ると、「解糖系」によってピルビン酸と2つのATPを生成します。ピルビン酸は酸素の助けを借りてミトコンドリアのマトリクスへ入り、クエン酸回路と電子伝達系が働くことでさらに2つのATPを生み出し、最終的にはミトコンドリア内膜(クリステ)で34個のATPが産生されます(ぶどう糖1分子あたり合計約38ATP)。これらが即戦力のエネルギーとして利用されます。
一方、無酸素運動などで酸素が不足すると、ピルビン酸はミトコンドリアに入ることができず、代わりに乳酸へと変換され、疲労の原因となります。
ぶどう糖は血糖値を上昇させますが、しだいに膵臓からインスリンが分泌され、一部のぶどう糖がグリコーゲンへと変換されることで血糖値は低下していきます。生成されたグリコーゲンは肝臓や全身の筋肉に貯蔵されます。
断食などで血糖値が低下すると、グリコーゲンが分解されてぶどう糖に戻り、再びエネルギー生成のために利用されます。筋肉に蓄えられたグリコーゲンは「筋グリコーゲン」と呼ばれ、全身の筋肉に広く存在し、その総量は肝臓の約2倍(全体の約8割)に相当します。
12〜18時間の絶食で肝臓のグリコーゲンは枯渇しますが、筋肉のグリコーゲンは運動時にのみ使用されます。また、グリコーゲンの貯蔵量は筋肉量に比例するといわれており、筋肉を増やすことで持久力の向上にもつながります。
また、過剰に摂取したぶどう糖は中性脂肪に変換され、脂肪細胞として体内に蓄えられるため、肥満の大きな原因となります。かつては脂質が肥満の主な原因と考えられていましたが、脂質は体内に吸収されにくいことから、現在では余剰のぶどう糖こそが肥満の主要因と捉えられるようになり、ダイエットにおいて糖質制限が重要だという認識が広まっています。
さらに、果物に含まれる果糖(フルクトース)は中性脂肪を増やしやすい性質があるため、生活習慣病の予防や治療の場面では摂取制限が指導されることがあります。
