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  3. トラウマ・精神状態に影響する神経伝達物質の特徴(10選)

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はじめに

私たちが感じる「嬉しい」「悲しい」「楽しい」「憂鬱」といった気持ちは、すべて脳によってコントロールされています。
それらの感情はなぜ起こるのでしょうか?
そこには、神経伝達物質の働きが大きく関係しています。

脳には無数の神経細胞(ニューロン)が存在し、それぞれが手を取り合うようにネットワークを形成しています。神経細胞の内部にある神経伝達物質を介して細胞同士が情報をやり取りすることで、感情や意識が生まれます。

神経伝達物質が適切な量で分泌されると、やる気が湧いたり、安心して眠れたりと、心の健康が保たれます。
メンタルを整えることは、神経伝達物質の特性を知っておくことも大切な知識となります。
本ページでは、精神面に関わる重要な神経伝達物質10種類について紹介していきます。

神経伝達物質の分類

神経伝達物質は、神経細胞が作り出す化学物質です。
その種類は100種類以上にのぼり、脳の部位によって使われる神経伝達物質は異なります。

神経伝達物質は大きく分けると、小さな有機分子で構成される「小分子伝達物質」と、アミノ酸が連なった「神経ペプチド伝達物質」の2つに分類されます。
これらの神経伝達物質は、神経細胞内にある「シナプス小胞」に蓄えられています。

神経ペプチド伝達物質は、電子顕微鏡で観察すると黒っぽく見えることから「有芯小胞」と呼ばれています。
代表的な神経ペプチド伝達物質としては、β-エンドルフィンやオキシトシンがよく知られています。

興奮系と抑制系

性質の面から見ると、神経伝達物質は神経細胞を興奮させるものと、抑制するものに分けられます。
興奮系としてよく知られているのは、グルタミン酸、ノルアドレナリン、ドーパミンなどで、これらは交感神経を高め、覚醒、学習能力の向上、興奮、不安などに関わります。

一方、抑制系にはGABAやグリシンがあり、副交感神経を高め、睡眠やリラックス状態に関わります。

興奮系と抑制系の相反する作用が適切に働くことでバランスが保たれ、脳は健全に機能しているのです。

モノアミン類

構造的に見ると、神経伝達物質は
「アミノ酸」「ペプチド類」、「モノアミン類」の3つに分類されます。

特にモノアミン類は、精神障害との関連で語られる「モノアミン仮説」としてよく知られています。
たとえば、
「うつ病はセロトニンの減少で起こる」
「統合失調症はドーパミンが過剰になって起こる」
といった説明が、このモノアミン仮説に基づくものです。
(現在では、うつ病の本質はPTSDの症状として理解され、結果的にセロトニンの減少が生じていると考えられています。)

モノアミン類は、1つのアミノ基(NH₂)が2つの炭素鎖を介して芳香環に結合した化学構造をもつことが特徴で、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン、ヒスタミンなどが含まれます。

この中でも、トラウマや精神疾患のコントロールに深く関わる神経伝達物質を分類すると、次のようになります。

モノアミンの種類(wikiより)

小分子伝達物質

興奮系(★モノアミン系)
★ドーパミン(モノアミン)
★ノルアドレナリン(モノアミン)

★セロトニン(モノアミン)
★ヒスタミン(モノアミン)

グルタミン酸(アミノ酸)

抑制系
アセチルコリン(コリンの酢酸エステル化合物
GABA(アミノ酸)
グリシン(アミノ酸)

神経ペプチド伝達物質

βーエンドルフィン
オキシトシン

小分子伝達物質の特徴

ドーパミン・・・快、意欲、学習、運動に関わる。

大脳基底核、黒質や被蓋でつくられ、運動、ホルモン調整、感情の豊かさ、意欲、学習などに関わります。
報酬系回路(A10)が刺激されることでドーパミンが分泌されます。

脳内での生成反応
フェニルアラニン⇒チロシン⇒L-dopa⇒ドーパミン⇒ノルアドレナリン

ドーパミンは体内で生成できないため、フェニルアラニン(必須アミノ酸)、チロシン(非必須アミノ酸)を含む食品から摂る必要があります。

・フェニルアラニンが多く含まれる食品
 牛レバー、マグロ、鶏むね肉
・チロシンが多く含まれる食品
 クロマグロ、豚レバー、高野豆腐
・ドーパミン生成に必要なミネラル
 葉酸、Fe,ナイアシン、ビタミンB6

精神疾患との関わり
・統合失調症ではおもにドーパミンを抑制する抗精神薬が用いられます。
・解離性障害では不足傾向

ノルアドレナリン・・・意欲、向上心、抗うつ作用

ノルアドレナリンは、脳幹の青斑核においてドーパミンからつくられる神経伝達物質で、交感神経を高める働きが強い作用があります。
覚醒力が強く、闘争あるいは逃避反応を生じさせて、心拍数を直接増加させるように交感神経系を動かし、脂肪からエネルギーを放出し、筋肉の素早さを増加させます。

脳内での生成反応
フェニルアラニン⇒チロシン⇒L-dopa⇒ドーパミン⇒ノルアドレナリン
ドーパミンからノルアドレナリンへの変換にはビタミンC,Cuが必要

・フェニルアラニンが多く含まれる食品
 牛レバー、マグロ、鶏むね肉
・チロシンが多く含まれる食品
 クロマグロ、豚レバー、高野豆腐
・ドーパミン生成に必要なミネラル
 葉酸、Fe,ナイアシン、ビタミンB6

適量だと困難に立ち向かう源となりますが、過剰に分泌されると、不安、緊張が高まり、パニック障害、不安障害、非定型うつ病、不眠症を引き起します。

セロトニン・・・精神のバランス、覚醒、うつ病に関わる

セロトニンは、中脳と延髄の間に位置する縫線核を起源とし、その神経線維は脳幹部や大脳皮質へと広がっています。
大脳においては覚醒を促し、集中力を高め、気分をすっきりさせるなどのリラックス効果をもたらします。

また、大脳辺縁系へ直接神経線維を送ることで、不安や恐怖といった情動のコントロールにも関与しています。
すなわち、セロトニンの放出を促進する物質は不安を高め、逆に放出を抑制する物質は抗不安薬として作用します。

脳内での生成反応
トリプトファン(必須アミノ酸)⇒5-HTP⇒セロトニン⇒メラトニン
・セロトニン生成にはトリプトファンが必要
・トリプトファンを含む食品
肉、魚類、豆類に多く含まれる
・セロトニン生成に必要なミネラル葉酸、Fe,ナイアシン、ビタミンB6

・セロトニンが減少すると鬱的症状を引き起こすとされています。(モノアミン仮説)
・うつ病でもない人、非定型うつ、新型うつタイプ、パニック障害に抗うつ薬、セント・ジョーンズワートを処方すると、セロトニンが過剰になるためセロトニン症候群を引き起し症状を悪化させる可能性もあります。

ヒスタミン・・・覚醒作用、ワーキングメモリ、過食を防ぐ、食中毒アレルギー

神経組織では神経伝達物質として働き、音や光といった外部刺激だけでなく、情動、空腹、体温上昇などの内部刺激によっても放出が促進されます。
その結果、オキシトシン分泌の調整、覚醒状態の維持、食行動の抑制、記憶・学習能力の調節など、さまざまな生理機能を高めることが知られています。

過食を防ぎ、思考の回転にも関わるとされているため、ダイエットや認知機能を高めたい場合には、意識して摂取するとよいでしょう。

脳内での生成反応
ヒスチジン(必須アミノ酸)⇒ヒスタミン
・ヒスチジンはカツオ、マグロなど赤身魚に多く含まれる。

・向精神薬の過食は抗ヒスタミン作用によるものと考えられている。
・ストレスによりヒスタミン分泌低下することで過食を招きやすい。

グルタミン酸・・・脳を解毒し学習能力をUP!

グルタミン酸は脳内で毒性となるアンモニアの解毒とそれを排出する利尿作用、脳を活性化し、学習や記憶能力を高める働きがあります。
しかし、増えすぎると毒性として働き、細胞死やパーキンソン病の発症に関わってきます。近年では、グルタミン酸の過剰が強迫性障害や統合失調症(グルタミン仮説)と深い関わりがあることが指摘されています。
脱炭素化により、リラックス成分であるGABA(ギャバ)に変換されます。

脳内での生成反応
グルタミン⇒グルタミン酸⇒GABA
・グルタミンからグルタミン酸への変換にはナイアシン必要
・グルタミン酸が不足することはほとんど心配しなくてよい。

・強迫性障害、統合失調症者はグルタミン酸が過剰傾向。

アセチルコリン・・・リラックス(副交感神経)、ひらめき、クリエイティブに関わる

この神経伝達物質は大脳新皮質や大脳基底核に存在し、副交感神経系や運動神経の末端から放出されます。
ノルアドレナリンの働きを抑制し、副交感神経を高める作用をもっています。

また、筋肉の収縮・興奮、記憶や認知を司る海馬の働き、血圧や脈拍、睡眠などにも関与しています。
さらに、増加すると創造性やひらめきとも関連することが明らかになっています。

脳内での生成反応
コリン+アセチルCoA⇒アセチルコリン
必須アミノ酸コリンを摂取することで増やすことができる。(レシチンにコリンが多く含まれる)

GABA(γーアミノ酢酸)・・・リラックス、睡眠効果を高める

GABA(γ-アミノ酪酸)はグルタミン酸から生成され、脳内で抑制性の神経伝達物質として働きます。
不安や興奮を和らげる精神安定作用があり、この働きを利用して、睡眠薬や抗不安薬の多くはGABAの働きを調整する仕組みをもっています。

また、交感神経からのノルアドレナリン放出を抑制することで、血圧を下げる作用があることも報告されています。
食品ではココアに多く含まれていることが知られています。

脳内での生成反応
グルタミン⇒グルタミン酸⇒GABA
・グルタミン酸からGABAへの変換にはビタミンB6が必要。そのためGABAが不足ぎみな場合はビタミンB6を多く含むものを摂取するとよい。
カツオ、マグロ、サンマなど魚類、
・体外から摂取したGABAは脳内に入らず神経伝達物質として作用しない。

・抗不安薬、睡眠薬(ベンゾジアゼピン系)、アルコールの作用する神経伝達物質。
・不安の強い、不眠症、全般性不安障害(GAD)、社交不安障害(SAD)、パニック障害、非定型うつ病ではGABAが不足傾向にあります。

グリシン・・・眠りの質を高める効果、美肌、アンチエイジング効果

グリシンはアミノ酸の一つで、アミノ酸の中でも最も単純な分子構造をもっています。
中枢神経系では、GABAに次いで重要な抑制系神経伝達物質として働きます。

ほのかな甘みと、菌の増殖を抑える静菌作用を活かして、調味料や保存料としてコンビニ弁当などの加工食品にも利用されています。

体内ではコラーゲンに多く含まれており、美肌、関節痛の緩和、アンチエイジング、睡眠などに関わっています。
また、体内の深部体温を下げることで、睡眠の質を高める効果があることも知られています。

・主に体内のグリシンを増やすことにメリットが多い。
・体内グリシンを増やすにはエビ、ホタテ、イカ、蟹、カジキマグロ、牛スジなどの魚介類、類鶏軟骨、豚足

神経ペプチド伝達物質の特徴

βーエンドルフィン

エンドルフィンは、食欲・睡眠欲・生存欲といった本能的欲求が満たされたときに分泌されることが知られています。
視床下部の弓状核にあるニューロンがエンドルフィンを分泌し、その後、下垂体前葉からβ-エンドルフィンが放出されます。

また、麻薬であるモルヒネと似た作用を示すことから「脳内麻薬」とも呼ばれています。
長距離走などで感じる高揚感、いわゆる「ランナーズハイ」は、このエンドルフィンの作用によるものと考えられています。

オキシトシン

オキシトシンは視床下部の室傍核で生成され、脳下垂体後葉から分泌されます。
異性との接触やスキンシップ、人との温かな交流によって分泌が促されることから、「絆ホルモン」「愛情ホルモン」とも呼ばれています。

また、オキシトシンはセロトニン(幸福感の向上)やドーパミン(意欲の向上)といったホルモンの分泌を促す働きもあります。

自閉症スペクトラム(ASD)では分泌量が少ない傾向が報告されており、一方で自己愛が強いほど分泌が増える傾向があるともいわれています。

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