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- トラウマ症状
「うつ」という言葉の広がりと誤解
2000年頃から「うつ」という言葉は急速に社会に浸透しました。
テレビや新聞、インターネットを通じて「うつ」という表現は日常的に使われるようになり、今では誰もが知る身近な言葉となっています。
認知度が広まったこと自体は、精神疾患に対する偏見を減らすという意味で大きな進歩でした。しかしその一方で、「新型うつ」「コロナ鬱」といったメディア的造語が氾濫し、本来の「うつ病(大うつ病)」とは異なる状態までが「うつ」と呼ばれるようになりました。
これにより、うつ病の本質がぼやけ、軽い気分の落ち込みや一時的な不安まで「うつ病」と混同される危うさが生まれています。
本来のうつ病は、単なる「気分の落ち込み」ではなく、脳と神経の働きに深刻な変化が起こる病気です。心の糸が切れ、感情が失われ、思考が強迫的に絡みつき、日常生活に大きな支障をきたす――そのような状態が長期にわたって続くのが「大うつ病」です。
本来のうつ病(大うつ病)の症状

本来のうつ病にかかると、今まで張りつめていた心の糸が突然切れてしまったように、胸の奥がずっしりと重たい不快感に支配されます。
・憂鬱感と倦怠感:一日中まとわりつく暗い気分と、体を鉛のように重くする疲労。
・失感感情・無気力感:喜びや楽しみの感情が失われ、何をしても心が動かない。
・強迫的思考:頭の中で同じことを何度も繰り返し考え、過去の後悔に囚われ続ける。
・自己否定と孤独感:自分を責め続け、心の中に空洞が広がり、寂しさと悲壮感が支配する。
さらに、強い解離性障害を伴うことも多く、思考がぼんやりと霞み、本を読んでも内容が頭に入らず、学習能力や集中力が著しく低下します。身体も思うように動かず、身だしなみが疎かになるなど、日常生活全般に大きな影響を与えます。
感情と対人関係への影響

心の中の満たされない思いが強くなると、人の幸せな姿を見ることさえ辛くなり、感情のコントロールが効かなくなります。
理解されない苦しみは葛藤を生み、次第に人間関係を避けるようになります。
思考が常に頭を占拠し、エネルギーを消耗するため慢性的な疲労感に陥り、仕事や学業のパフォーマンスも低下します。
結果として劣等感や自信喪失が強まり、自己評価が下がっていく傾向があります。
うつ病にかかりやすい人の特徴

うつ病は以下のような人が発症しやすい傾向があります。
・神経発達に課題を抱える人:幼少期や成長過程でトラウマを経験し、神経が繊細な状態にある。
・HSP(Highly Sensitive Person)タイプ:感受性が強く、ストレスにより解離性障害やPTSDを受けやすい。
・併存症を抱える人:不眠症、過敏性腸症候群、強迫性障害(抜毛症・皮膚むしり症)、登校拒否経験など。
・性格的特徴:内向的、身体が緊張しやすく呼吸が浅い。
うつ病のタイプ(DSM分類を中心に)

うつ病は一様ではなく、症状や背景によっていくつかのタイプに分けられます。
適応障害

パワハラ、嫌な仕事、環境におかれたとき一時的なうつ状態になること。主に「悩み」で憂鬱、不安になっているもので 環境的な悩みから逃れると元の状態に戻るものです。主には職場カウンセリング、相談などが解決策になります。
向精神薬の処方はDMSには不適とされるが、抗不安薬が処方されるケースが多い。
そのため、ベンゾジアゼピン被害者となるケースが多々みられます。
抑うつ

交友関係のトラブル、借金、人生などの悩みによる憂鬱感。軽いうつ状態。だいたい初診でつく場合が多いです。大うつ病でも抑うつと診断名がつく場合もあります。
非定型うつ病

交感神経優位タイプ ・・・ノルアドレナリン増加、
高いところにいるような慢性的不安感。不眠、動悸、イライラが強いといった症状がでやすい。
全般性不安障害、パニック障害、PTSDを伴いやすい
境界性パーソナリティータイプにおおい。
抗不安薬、睡眠薬が処方される。
大うつ病

副交感神経(背側迷走神経)優位タイプ・・・ノルアドレナリン、セロトニン減少
深い海に沈んだような憂鬱感。過眠、憂鬱、無気力感、失感症状、解離性障害が強い症状。
抗うつ薬が効きやすい。
※「新型うつ(自己愛タイプ)」は医学的には認められていないメディア造語。
発症のきっかけ

発症年齢は20〜30代に多く、環境変化や人間関係のストレスが引き金となります。
・大切な人との死別や離別(対象喪失)
・転職、昇進、退職、リストラなどの社会的変化
・学業や仕事の失敗、挫折
・病気、過労、事故、更年期障害、妊娠・出産
・災害や犯罪被害などの外的ショック
・生育歴や生活史からくる内面的ストレス
など
精神医療での治療法

うつ病は脳内の神経伝達物質の減少によって慢性的な無気力感や精神不安定を引き起こします。
これを補うために開発されたのが 抗うつ薬 です。
・定型うつ病:抗うつ薬で気分は改善するが、自律神経の乱れは根本的に治らないため、服薬を継続する必要がある。
・非定型うつ・不安障害:抗うつ薬が逆効果になる場合があり、抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)が処方される。
ただし、いずれの薬も「治療薬」ではなく「対症療法」であり、生涯服薬が必要になるケースもあります。長期服薬による副作用や離脱症状も大きな課題です。
まとめ ― 本来のうつ病の理解
本来のうつ病とは、単なる気分の落ち込みではなく、脳と神経の働きに深刻な変化が起こる病気です。
・心の糸が切れるような重苦しさ
・喜びや意欲の喪失
・思考の強迫と自己否定
・解離や学習能力の低下
・慢性的疲労と社会生活への影響
これらが長期にわたって続くのが「大うつ病」です。